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Susan Dexter スーザン・デクスター
エスドラゴンという世界での話が中心のシリーズをメインの著作としている。残念ながら「冬の王」三部作など今では殆ど絶版となっているが、「エスドラゴンの軍馬」シリーズ等、馬のヴァラダンが登場する系列シリーズも楽しい作品である。分類として少年少女向けに分類される場合が多いようだが、もっと育った世代(笑)でも問題なく楽しめる作品群。
The Ring of Allaire (社会思想社邦訳:アレール姫の指輪)
この巻のみ井辻朱美・訳で社会思想社より出版された模様。
ある日、偉大な魔術師ブレイス(Blais)は氷の魔術師ニミール(Nimir)に殺されてしまう。 でき損ないの弟子だったトリスタン(Tristan)は、ブレイスの意志に従いカランドラ (Calandra)を救うことが出来ると言われている眠れるアレール(Allaire)姫の目を覚 まし、救出すべく旅に出る。消えたエストラゴン(Esdragon)の不思 議な伝説の軍馬ヴァラダン(Valadan)を探し、真の王位後継者である騎士ポラッサー (Polassar)を探し出し、更にアレール姫がニミールに立ち向かう為に必要な十番目 の指輪を見つけ出した後、ニミールに立ち向かわねばならない・・・。トリスタン自 身にも実は出生の秘密が・・・ ストーリーは単純明解で、良くある「仲間とグッズを集めて敵に立ち向かう」という 紋切り型の構成であるが、そんな展開が気にならないしっかりしたストーリーで読む 者を引き込んでくれる、お薦めの作品。万能の主人公とは程遠いトリス タンに愛着が湧く。話をする馬ヴァラダンや猫のトーマスがなかなか可愛くて良い。 一巻のみで続きの翻訳が出版されなかったのが至極残念である。小粒の上品で飽きな い作品。 The Sword of Calandra (カランドラの剣)
様々な障害を乗り越えてアレール姫を救出し、クローゲンにたどり着いた一行。
しかし全てがそれで落ち着く事はなかった。
正統な王位の継承者と判明したトリスタンには、更なる試練が待ち構えている・・・ 無事王位継承の儀式を行う為に、遥か昔に行方がわからなくなった前王の剣、「カランドラの剣」を探し出さねばならなかった。 トリスタンはその剣を探すために再び冒険の旅に出る。唯一の手だては占い師のクリュー ツェル(Crewzel)だったが、彼女も又行方不明となっていた。トリスタンはクリュー ツェル探索をしつつ、カランドラの剣について調査をしていった。だが残念なことに トリスタンに与えられている時間は短く、一向に何も手がかりがつかめない状態が続 いた。せっぱ詰まったトリスタンは、一大決心で新しいカランドラの剣を鍛造するこ とにしたのだが・・・ 二巻目は成功した一巻に比べて質の差が目立つ場合が多く、ストーリーも惰性で動こ とがしばしばあるが、本作品は例外でそれ自体として十分楽しめる「物語」である。 ストーリーの規模を広げすぎることなく、又それぞれに愛着を覚えるキャラクター達を使い捨てにす る事もなくしっかりフォローしているのが良い。 Mountains of Channadran (チャンアドラン山脈)
平和を取り戻すため終に氷の王ニミールに立ち向かう一行。 果たして彼らは勝利することが出来るのか・・・?
見習い魔法使いでカランドラの王となったトリスタンにはまだまだ試練が待ち構えていた。 冬の王にして氷と嵐の支配者ニミール。彼はすべての大陸を征服する野望を捨ててお らず、世界を氷で覆ってしまおうとしていた。冬は長くなり、氷は世界を侵食する。 トリスタンはニミールの野望を砕く為、みずから仲間達と共にニミールの支配する領 域へと乗り込んでいくのであった。果たしてトリスタンは世界を氷と雪から開放するこ とが出来るのだろうか・・・? 冬の王三部作最終巻である。今回はニミールと直接対決するために、トリスタン一行 は彼の本拠地である山に決死の冒険に旅立つわけだが、最終巻にふさわしくしっかり と話しがまとめられている。途中遭遇する敵を倒しながら直接ニミールと対決するト リスタンは、果たして本当に彼を倒し、国を永遠の冬から開放することが出きるのか・ ・・万能のヒーローから程遠いタイプのトリスタンにはついつい応援したくなるよう な愛着が湧く。脇役達も丁寧に描き込まれ、それぞれが生きて動き回っている。 翻訳されなかったのが惜しまれるシリーズ。猫のトーマスも良い味を出しているが、鳥のミンストレルが又可愛い・・・ 最近ありがちな膨大な字数にはしることなく楽しめる「ファンタジー」の素の姿を感じさせてくれる三部作で、お勧めの三冊である。 |
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