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Diane Duane ダイアン・デュアン
『魔法使いになる方法』というヤング向けファンタジーが二冊翻訳されており、スタートレック作品も多く手掛けている作者である(『宇宙大作戦 スポックの世界』) そんな作者の未完のファンタジーシリーズを少し御紹介。
Tale of the Five (五物語)
1979年に第一巻が出版され、5年ほどたってから二巻が登場。更に8年くらいで第三巻が出たが、4巻はタイトル予告のみ(The Door into Twilight)で日の目を見ることなく月日が過ぎ去ってしまっていた。そんな中、粒ぞろいの絶版作品を多く蘇らせているMeisha Merlin社が、幸運にもこのシリーズの再販を手掛けた。既に出版された3冊をまとめた"The Sword and the Dragon" (剣と竜)というタイトルの本で、幻の(?)続編も出版予定になっている (待っているのになかなか出ない・・・) 早く出ないかと首を長くしているのだが
尚、リン・カーター編集のFlashing Swords! #5: Demons and Daggersというアンソロジーの中に "Parting Gifts." というこの世界の短編が含まれている。 四方を海と山と荒地に囲まれた土地。そこに中王国と呼ばれる国々があった。中でも 二大王国であるアーレンとダーゼンは正当な古からの王位継承者同士による誓約により友好関係を結び中王国の繁栄を支えてきた。 だがダーゼンの王が世継ぎを指定しないまま他界した為王権の簒奪が起こってしまう。 王の息子フリーローン(Freelorn)は数名の仲間と共に逃亡し、追われる日々を過ごしている。正 当な王権が絶えたことでアーレンとの誓約が途切れて、国々は乱れ始める。そして「影」はその乱れに乗じて国々に魔手を伸ばし始めるのだった・・・・ 登場人物の"自分"の発見と成長、人間関係がよく描かれた作品。ストーリのテーマは ありがちであるが、世界観の設定が面白い。女神は想念や信仰上のものでなく身近に実在し、 人々が思わぬ時に遭遇する事もあり得る現実的な存在である。ただし本作品を読むにあたって はオープンな心で当たることが必要。人々は一度だけ子孫を残す義務を果たしさえす ればその他の道徳的柵は無く、自由に愛し合うことが出来るのである。誰を愛するか ではなく相手を"愛する"ことだけが重要な社会だからである(性別不問・・・自由奔放な恋愛観)主人公のヒアウィス(Herewiss)とフリーローンも生涯を誓った関係。 要するに、同性愛的な関係が見受けられるが心理的な部分が前面に出ているので、苦手な方は『深い友情』に置き換えて読むのも又一つの読み方である。 炎霊で馬の姿を好むサンスパーク、膨大な魔力を持ちながらフォーカスが無く使うことの出来ない 女性セニュボラ(Segnbora)、セニュボラと関係のある竜達、異世界への扉・・・色々な種族と柵が入り混じり物語が展開していく。 The Sword and the Dragon
最初の二作を一つにした巻。"The Door into Fire" と "The Door into Shadow" が収録されている。
Book 1: The Door into Fire(炎への扉)
本シリーズで中心となる魔力は「内なる炎」を具現化させることにより初めて有効に使える。
具現化させるにはフォーカスとなる物体が必要で、女性には杖だった。炎を秘めた男性は遥か昔に途絶えてしまっていたが、ヒアウィスは何百年かの年を経て現れた男性として唯一の炎の内包者である。
だがヒアウィスには女性の道具である杖は原理的に相性が悪く、フォーカスとなる物体が無い。
一応ヒアウィスは炎が具現できなくてもそれなりの魔法使いであったが、彼の人生はフ
ォーカスを得る事が目的と言ってもよく、何度も失敗を繰り返しながら自ら剣を鍛え
てそれをフォーカスにしようとしていた。そんなある日、彼は恋人のフリーローンか
ら助力を請われる。救助に行く途中、雨のため苦境に陥っていた炎の精霊サンスパー
クを救い(火と水で相性が悪い)、行動を共にするようになるが、精霊とは"死"の考え方や感じ方が異なり対
処に苦労してしまう。だが徐々にサンスパークは"人"の感情を理解していくのであった。
フリーローン一行を無事救出したヒアウィスは、その足で他世界に続く扉のある塔へ
と向かう。炎を具現化させる何らかの方法を探すために。
だがヒアウィスはその塔に封印されていた魂を喰う異世界の化け物を開放してしまい
一行は襲わる。唯一の武器は炎を使える魔法使いの力だったが・・・果たしてヒアウィスはフォーカスを得て炎を使えるようになるのか? フリーローン達に化け物が襲いかかる。その時サンスパークは炎霊として考えられない行動に出て・・・ 女神との遭遇、自分の真の”名”の発見、過去の辛い記憶の克服と魔力の獲得、世界 を救う使命、愛し合う存在 そんなありがちのテーマが上手くよりあわさってなかな か読み応えのある作品に仕上がっている。 |
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