三シリーズそれぞれの短編集からなり、退魔師達の活躍を描く。描写される猟奇シーンにもかかわらず、全体的にインパクトが小さい。しかしそれなりにこじんまりとした作品達である。主人公達がなかなか魅力的。もっと描き込まれないのが残念。

I.　　世阿弥妖曲集
能楽師・世阿弥元清。陰陽道の流行により廃れた呪禁道は、猿楽へと受け継がれていった。そして能楽の中に紛れ込んだ。能楽師の世阿弥は夢幻能を追求し不可思議の世界を垣間見る・・・。 世阿弥は、芸を極める道すがらに遭遇する怨念の怪異を封じるのだが、些か構成がもの足りなく思える。終盤がややあっけないのが残念。尚、本のタイトル「西行桜」はこのシリーズの短編からの題名となっている。

II. 　闇源氏物語
平安京随一の美貌の狩籠師（退魔師）闇源氏こと源　霞。遭遇する魑魅魍魎を退治する。事件は面白そうな設定で運びも悪くないのだが、やはり終盤もの足りない。 「世阿弥」物も同様だが、もう少し書き込まれていたら大変魅力的だったのではなかろうか。

III.　元三大師幻奇譚
比叡山の良源のエピソード。人離れした逸話を語っている。