恋人に自殺された過去を持つ主人公の幻想小説家・竜造寺爵。読者だという画家の男性から自分に憑いている天使を祓ってくれと依頼される。其の天使、実は自分の死んだ恋人に関係があり、寺爵はその天使を廻って或る教団と謎のチェリストの確執に巻き込まれていく。彼の恋人は何故自殺したのか？ 長い年月が経ってからも其の傷が癒えない彼は、事実を知るために天使祓いを引き受ける。そこで明らかにされたのは・・・
転生、地上に墜ちた天使、天への帰還、そしてグリゴリ。 それらをテーマにした浪漫奇談。恋人を情緒纏綿と思い出す様は些か飽きがくるのが難点。又、幾つか事件と呼べる事が起こるのだが、 その事件の本質や示唆される現象にしては起伏が乏しく感じられ冗長さが目立つ。文体が穏やか過ぎるのか？ だが、別世界への憧憬や現実世界での苦悩、切ないまでの主人公の想いなどの描写は大変雰囲気があり、全体的にまとまった展開をみせてくれる。 内容的には単純な展開をしているのだが、構成はすんなりと落ち着いてじっくり味わえる仕上がりとなっている。