◇ 破魔矢堂 書籍館/本館 ○ 書籍紹介 ■ 国産小説洋書Fantasy | 国産小説 | 文献・参考資料 | 辞典・百科 | 其の他
ファンタジーからホラーまで幅広く手がける。代表作は此処で紹介している『封殺鬼』。この作品は小学館の少女向け出版ラインから出されたのが残念に思える作品である。
* 封殺鬼シリーズ   (小学館キャンバス文庫: 西 炯子、 小学館新書: 下村富美・画)
千年以上の時を生きてきた二人の鬼、雷電と酒呑童子。現代での名前は志島弓生と戸倉聖。その二人が遭遇する事件を描いた作品。 晴明に使えていた二人は、晴明亡き後もその陰陽師の一族に従って使役鬼として生きてきたが・・・
弓生と聖を使役する陰陽師の家は『本家』と呼ばれ、『本家』は三つの家、神島家・御景家・秋川家から成り立っていた。 その中でも主導的立場を確保した家が鬼使いとして2人の鬼を使役する権限を持っている。 現代での鬼使いは神島家の当主。他の家の次期当主を交え人間関係やキャラクターが良く書き込んであり、話の展開も無難。 後半はやや手を広げすぎた感があり、話の進行や展開がありきたりになりがちだが、全体を通じて十分楽しめるシリーズである。

ドラマCDも2枚出ている。 (「鳴弦の月」収録の"蠱持ち"と「影喰らい」)「蠱持ち」 の初版CDには初版限定で弓ちゃん(笑)の運転免許証と聖の学生証が附録として封入されていた。 「影喰らい」にはおまけ 6"CDが入っており、ファンには楽しめる内容となっている。
  • 封殺鬼 蠱持ち  (日本コロムビア COCC-14024)
  • 封殺鬼 影喰らい (日本コロムビア COZC-40〜41)
封殺鬼選集として新書版で発行されている新書版。イラストレーターが替わり、嬉しい改装版である(内容は極僅かな加筆修正有り。殆ど変更無しの模様)
封殺鬼選集2:鳴弦の月@アマゾン 封殺鬼選集3:妖面伝説@アマゾン
  • 封殺鬼選集 (小学館新書)
    1. 鬼族狩り ISBN: 4093874247 (2003/02)
    2. 鳴弦の月 ISBN: 4093874255 (2003/04) 「鳴弦の月」、「影喰らい」、「幻戯師」収録
    3. 妖面伝説 ISBN: 4093874263 (2003/06)
尚、「封殺鬼」シリーズ電子書籍も販売されている。電子書籍化第一弾は「封殺鬼選集 鬼族狩り」
ビットウェイブックスから販売中。電子書籍 「封殺鬼選集 鬼族狩り」
今後毎月一冊ベースで発売されるそうだ。(個人的にデータには興味がないので買う予定は無いが、電子書籍をお好みの方はに良いかも。担当者からDMで情報提供を頂いたので皆様の御参考まで。)

1 鬼族狩り  ISBN: 4-09-430111-9 (初版発行 1993/11/10)
鬼の血を継ぐ少年、成樹。闇が薄くなった現代で鬼になることはないはずだったが、気がつくと回りには次々と不思議なことが起こっていた。次第に彼は自分自身の鬼化を恐れ始める。 何故変化が起こり始めたのか・・・
そんな彼と知り合った二人の青年、弓生と聖。実は彼らは千年余りを生きてきた鬼だった。
この話、人物紹介には成樹が主人公として紹介されていますが、絶対に主役は2人の鬼・・・
2 妖面伝説  ISBN: 4-09-430112-7 (初版発行 1994/1/10)
鎌倉では『本家』の術者が3人も返り討ちにあってしまう。その事件の解決を指示されたのは秋川の次期当主・佐穂子であった。 佐穂子を補佐するために、弓生と聖は鎌倉へ派遣される。犯人は般若の面を着けていたが、その面は2人の鬼と或る因縁があった・・・ "家"に反発するために、聖や弓生に冷たくあたる佐穂子だが、段々と鬼たちに打ち解けはじめる。突き止めた犯人は実は・・・
この巻以降、主役は名実共に弓生と聖です。
3 朱の封印  ISBN: 4-09-430112-7 (初版発行 1994/1/10)
鬼化をまぬがれた成樹だったが、彼の回りには再び奇怪な現象が起こり始める。 彼は風鬼・水鬼・火鬼・隠形鬼という四天鬼を身に潜めていた・・・ そんな成樹と再開した弓生と聖。 2人は東京で降った真紅の雪と起こり始めた怪異の調査を始めていた。その怪異の影には思いがけない人物がいた・・・ この巻から御景家の次男、三吾が関わってきます。尚、この話は八巻まで続きます。
4 ぬばたまの呪歌  ISBN: 4-09-430114-6 (初版発行 1994/8/10)
東京での怪異は治まる所を知らず、陰で糸を引いている九天地会の教主・知徳の正体と目的は未だ不明のままである。 そこへ東京の大学に入ることになった佐穂子も弓生、聖、三吾と成樹に加わる。一方、遙か昔に弓生と関わりのあった人物が現れて、その人物は知徳と繋がっていた。 弓生を怨むその人物は、弓生に罠をかけて捕らえようとするが・・・
歴史に埋もれた人物達が復活して戦いが始まります。
5 邪神は嗤う  ISBN: 4-09-430115-1 (初版発行 1994/10/10)
知徳の正体は、安倍晴明の死にかかわりのある人物だった。弓生にとっては憎悪の対象である彼を、『本家』は 生け捕るようにと指令を出す。弓生は晴明との約束で決して恨鬼に戻らないことを誓っていたのだが・・・ 一方、九天地会の知徳の目的は平将門と関係があった・・・
滝夜叉姫も登場し物語は展開していく。
6 紺青の怨鬼  ISBN: 4-09-430116-X (初版発行 1995/1/10)
『本家』は弓生に知徳を生け捕るように指示したが、弓生の心は憎悪と晴明との約束の狭間で激しく揺れ動き悩む。 そんな彼を見かねた聖は、単身敵を倒そうと敵地に乗り込む。しかし蘇った将門の怨霊に敗れてしまう。 聖を失った弓生は、深い憎悪の狂気に閉ざされていく。三吾はそんな弓生を見守るがなす術がない・・・
三吾と佐穂子、神島家の当主代行・達彦や『本家』の術者達も本格的に動き出す。果たして聖は、怨鬼となった弓生は・・・?
弓生と安倍晴明の出会いも描かれていて、次巻に飛びつく一冊です。
7 闇常世  ISBN: 4-09-430117-8 (初版発行 1995/4/10)
千年余りを共に生きてきた聖を失った弓生は、未だ静かな、しかし深い狂気の中にいた。そんな時、敵である滝夜叉から 聖が助かる可能性のあることを知らされる。その方法は鬼つかいである達彦の父、隆仁でなければ使えないものだったが、 床に伏せっている彼に知らせることを達彦は拒む。『本家』と決別した弓生は一人敵地に向かっていく。 一方、佐穂子も聖を助ける手段を求めて奔走し、先代の鬼つかい桐子の元へ向かう。
果たして聖の復活はなるのか? 最終幕に向けて主要人物が出揃います。
8 修羅の降る刻  ISBN: 4-09-430118-6 (初版発行 1995/7/10)
神島家の先代当主桐子。復活した聖と平静に戻った弓生は桐子の指示に従うこととなった。知徳は『本家』の持つ秘術を 狙って最終の詰めに入り、復活した平将門の怨霊と滝夜叉達、桐子や『本家』の次期当主達と術者、四天鬼を支配する成樹 入り乱れて最後の対決に雪崩れ込むクライマックス。
9 鳴弦の月  ISBN: 4-09-430119-4 (初版発行 1995/8/10)
『鳴弦の月』と『蠱持ち』の二篇を含む。『鳴弦の月』は平安時代、当時都を騒がせていた酒呑童子こと鬼同丸と、 菅原道真の恨みの化身であった雷電こと土師高遠の出会いを描いた話。安倍晴明を絡めて描く邂逅編!
『蠱持ち』は"オサキ"という憑き物を受け継ぐ青年と二人の鬼の出会いと事件を描く短編です。
10 花闇を抱きしもの (上)  ISBN: 4-09-430120-8
時は大正。神島桐子と弓生、聖の遭遇した事件を描く。当時桐子は10歳で神島の家を継ぎ、鬼つかいとなった。 体制側の術者がねがえって反旗を翻すという情報に、神島家は桐子に呪詛を行わせようとする。 しかしその背景には当主である桐子の知らない陰謀が隠されていた・・・
11 花闇を抱きしもの (下)  ISBN: 4-09-430321-9 (初版発行 1996/5/10)
計画された呪詛に不穏なものを感じとった弓生と聖。桐子の意をくみ背景の調査を始めたが、遷都に絡んだ陰謀が明らかになっていく。 しかし呪詛の背後には、桐子の知らぬところで思わぬ神島家の陰謀が隠されていた・・・
桐子と二人の鬼達の関わりを描いた話で、三人の微妙な気持ちが描かれている一品です。
12 マヨイガ (上)  ISBN: 4-09-430322-7 (初版発行 1996/11/10)
場所は遠野。御景家の術者と東北地方の陰陽師達との間に問題が発生した。 その後始末に御景家の長男眞巳がほぼ人質のように派遣される。それを不満に思った三吾は家の反対をよそに単身 遠野に赴く。一方神島の命を受けた弓生も遠野に向かう。地元の術者を殺害したとされる御景家の術者によって命を狙われた三吾は弓生に助けられる。 次期当主の三吾を何故殺そうとしたのか、事件の背後には謎の影が・・・ 三吾がメインの巻です。
13 マヨイガ (中)  ISBN: 4-09-430323-5 (初版発行 1997/2/10)
弓生は三吾を助けたときに腕に軽い傷を負った。軽い傷だったはずが、何者かの呪により弓生は危機に立たされる。 弓生は攻防をしながら山奥に入り込んで行き、力を使った際に結界に入り込んでしまう。外の世界と隔絶した異界に 入り込んだ弓生は・・・
弓生が神隠しにあったという情報は何者かによって神島に伝わる。神島は独自の思惑を抱えて聖を遠野に行くよう誘導する。 地元の術者との緊迫した関係の中にいる三吾と神隠しにあった弓生を助けるため聖は遠野の事件に飛び込んでいった。
三吾と眞巳、弓生と聖が出揃って話は結末に向けて加速します。
14 マヨイガ (下)  ISBN: 4-09-430324-3 (初版発行 1997/6/10)
異界の狭間から救出された弓生は事件の背後に潜むものの正体に気づき始めた。果たして犯人は本当に御景の術者なのか? 新たに東北と『本家』の決裂の危機が迫る。出現した羅ごう星との関係は・・・? 事件の黒幕は意外な存在だった。
遠野篇最終巻ですが。羅ごう星がらみの話は続きます。
15 影喰らい  ISBN: 4-09-430325-1 (初版発行 1997/11/10)
『影喰らい』と『幻戯師』の二篇を含む。『影喰らい』では再び時が平安時代に移る。時の陰陽師は泰親。人の影を喰らう妖しが 出現し、調伏に乗りだすが、その妖しの正体は・・・ 性格は全く異なるが安倍晴明に似た面差しの泰親に高遠は戸惑を隠せない。 内面の葛藤をかかえて泰親に使える彼だった。高遠こと雷電の微妙な心境を描く一品です。
『幻戯師』の時代は明治時代。その時代の妖怪達と二人の鬼の関わりを描いた作品です。最後に弓生が声をたてて笑うシーンが珍しい。
16 夢埋みの郷  ISBN: 4-09-430326-X (初版発行 1998/2/10)
話は再び羅ごう星がらみに戻る。今回の異変は信州の諏訪で起こった。秋川家の管轄であるため、佐穂子が現地に赴くが、事件とは全く 関係ない秋川家の思惑があった。一方、凶星・羅ごう星と関係のある天狗達も新たに動きだす。事件に巻き込まれた佐穂子は 行方不明となり、弓生と聖は神島の命を受け本格的に動き出す・・・ この話は佐穂子がメインで他の人物はやや影が薄いです。
17 紅蓮天女  ISBN: 4-09-430327-8 (初版発行 1998/8/10)
行方不明の佐穂子を探すために弓生と聖は長野へ向かった。今回の天狗の思惑は未だ謎に包まれたままだが、状況から 現地の「柵の一族」と本家を対立させるような動きが見える。鬼女・紅葉の復活にからんで、さまざまな思惑が交錯する。 破壊行為を働いたのは紅葉かと思われたが、実は天狗に躍らされた別の存在であることが判明してきた。 佐穂子は未だ(一応)捕らわれの身のまま。紅葉は何を伝えたいのか、天狗の計画の真意は何か?
秋川側近衆と佐穂子、柵の一族、それに弓生と聖+人間モードの天狗がメイン。この巻でもまだ長野篇は終わりません。 このまま謎を残して次巻へ続きます。
18 まぼろばの守人  ISBN: 4-09-430328-6 (初版発行 1998/12/10)
天狗の思惑に対抗しようと柵に和解を申し込む秋川。しかし天狗の手は既に柵の一族にも及んでいた。交渉の席の途中、 一族の拠点から火の手が上がり、秋川・柵の兄弟達、(一応)人質になっている佐穂子、そして弓生と聖がそこにあつまった。 次第に明らかになる天狗の狙い。鬼無里の真の存在意義が明らかになる。しかし更に天狗の陰謀は広がり、中央・本家・柵を巻き込んだ 展開へと発展する様相を見せ始める。鬼無里の鬼を守る者の正体は平将門の残党だということから中央が乗りだす可能性が高まる。 そんな中、佐穂子は状況を打開するため紅葉をを守ることを宣言し・・・ 一方達彦が力を欲する原因の一端についても触れられる。今回、少し三吾と達彦が出てきます。このエピソードは佐穂子・秋川家中心 にすすめられています。
19 追儺幻抄  ISBN: 4-09-430329-4 (初版発行 1999/6/10)
鬼無里編の最終巻。柵と手を組んだ秋川。紅葉を守ることを決断した佐穂子であったが、天狗はお万を手玉にとり中央の術者を殺害させる。 未だ情報量が少ない中央を煙に巻くべく、秋川家は対策を立てるが、神島は一歩先んじて中央との交渉を決定していた。弓生は秋川の代表である側近の矩川と東京に向かう。 三吾も又、御影の代表として達彦に呼ばれていた。そこで、鬼無里への手出し無用を宣言した達彦は、遂に使役鬼の存在を中央に明らかにした。 ようやく本家と話をつけた秋川家はお万排除を最優先として弓生と聖、柵達とことに当たるのであった。そして遂に紅葉が蘇る・・・
一応この編はこれで完結していますが、まだまだ天狗シリーズは続きます。盛り上がって来たと思った割りにはやや最後があっけなく、些か消化不良の感もあり。とりあえずは無難なハッピー(?) エンド。 中央の新キャラも登場し、次回からは東京編の始まりか・・・?
20 陰月の冠者  ISBN: 4-09-430330-8 (初版発行 2000/5/1)
東京。天狗の暗躍は続く。今回は天狗の庄間配下も盛りだくさん。本家・神島の達彦がターゲットとなる。神島達彦災難編とか。弓生と聖も表舞台に立ち戻り暴れ回り、読みごたえ十分。 そして鬼の存在を知った中央にも何やら不穏な動向が・・・ 話の運び具合がやや軽め(運び方だけです。内容が軽い訳ではありません ^^;) だが、生き生きとしたキャラクタが魅力的。
21 昏き神々の宴  ISBN: 4-09-430571-8 (初版発行 2000/10/1)
神島は中央との取引に応じ、鹿島へ出向く事となった使役鬼。古、葬り去られた神が息吹を吹替えし、星読みの力も及ばなくなっていく。そして聖と弓生はとある事件をきっかけに中央から追ってが・・・ 本家と中央、神島・御景・秋川の三家の力関係にも変化が起きてくる。
今回は話の展開が急となり、この先の話の運び具合が気になるところ。やや不穏な展開をみせてきている。聖の災難篇とも言えるか? 表紙のイラスト、今回はまともなので一安心 (笑)
22 忌みしものの挽歌  ISBN: 4-09-430572-6 (初版発行 2001/5/1)
追われる身となった弓生と聖は、高良によって安全な場所に匿われた。中央の人間のはずの高良は何故二人を匿うのか・・・その謎が高良の口から明らかになる。一方鬼抹殺の爲に動く中央は、本家に接触していた。対立する中央と本家。だが本家内部の対立も決定的なものとなっていく。神島と御景は違う方向へと進もうとしていた。苦しい決断を迫られる三吾。そして聖に取り憑いた夜刀神は・・・
23 炎華の断章  ISBN: 4-09-430573-4 (初版発行 2001/10/1)
今回は若干名を除いた敵味方共フルキャストに近いメンバーが揃っている。各々の状況が急展開を見せはじめ、膠着状態が解け出した気配。それぞれの登場人物に焦点を当てているので、特別目立った活躍は見られないが、今後の展開への大きな布石が整った感がある。この『天狗・羅ごう編』はまだ数冊続くらしい。
何も知らずに実家に帰っていた佐穂子は、聖と弓生の状況を知り秋川を捨てる覚悟をした。一方成樹も三吾に会い、鬼達の現状を知る。聖と弓生を助けようとする佐穂子と成樹、家のしがらみから背くことが出来ず悩む三吾。鬼無里の人々と紅葉も巻き込んで、物語りが進展していく。何故か鬼達を匿う高良の正体も中央に知られるが、高良は己の予見に従い、駒を動かし始めるのだった・・・・。天狗側も行動を開始し、全ての駒が新宿に揃う・・・ 鬼と天狗の対決、本家神島と御景・中央の全てが集まりだして・・・次巻をお楽しみに (*^^*)
24 黒白の絆  ISBN: 4-09-430574-2 (初版発行 2002/9/1)
黄泉と化した異界の新宿。庄間の一味である天狗の理緒は我知らずその血をもって妖魔を呼び寄せていた。異界の新宿に迷い込んだ成樹は、自力でそこを脱出しようとするが、途中天狗の一人黒月から、理緒の役割を知った彼は彼女を探し出し止めようとするのだった。一方新宿に到着した佐穂子と千冬は庄間に遭遇し危機を迎えるが、柿色の衣の鬼が現れて救われる。成樹を助けようと異界に入った弓生・聖と三吾の三人は妖魔を相手にしながら進んでいた。途中夜刀が発現し、僅かに情報を得た彼らは佐穂子達と合流、お互いの情報から羅ごうの真の姿を知った。 弓生達と合流した成樹は理緒を止めることに成功し、異界は消滅。現実に戻った二人の鬼と佐穂子・千冬、三吾、成樹はそれぞれ分かれて中央と御景の術者から逃れて行く。一人ホテルに戻った弓生はロビーで高良と共にいた神島達彦に出会う。二人の鬼は神島の庇護下に置かれたのだった。 神島に戻った弓生は達彦の或る秘密を目撃することに・・・
と、実に時間軸の移動が少ない巻でした。異界に入って出てきただけです(笑)ちょっとヤバイ秘密を抱えている達彦。これから最後に向けてどのような展開になるか楽しみです。
25 玉響に散りて  ISBN: 4-09-430575-0 (初版発行 2003/3/1)
神島は鬼を庇護し、御影眞巳は鬼を狩る中央と組む。そして鬼から手を引く秋川。三家三様、本家はもはや崩壊するかと思われた。そんな中で御影家次期当主の三吾は初めて真っ向から眞巳と対決し、自らの意思で御影の方針を決断する。聖達を守りたいが為に秋川を出た佐穂子は、昔家を捨てた父親に会いに行っていた。秋川に当主として戻れと言う為に・・・ 一方神島では、中央の御師と達彦が鬼と韴御霊剣を巡り話し合いをしていたが決裂。真っ向から対立することになる。 そんな中、達彦は秋川と御影の粛清に乗り出すと決意し、鬼使いの神島として弓生達に指示しようとしていたが、神島当主・隆仁の容態が悪化、その遺言によって全ては無に帰すのであった。隆仁の最後の命令は崩壊寸前だった三家の立場を救う。
隆仁亡き後、それなりに三家の人々は次期当主達を含め落ち着きを取り戻していくようだった。そんな頃、弓生は又柿色の衣を纏った異形の夢を見る。そこで告げられた言葉は土師高遠としての重大な役割を示唆するものであった・・・
新たな命令により中央側に付く高良。黒月は庄間に決別を告げる。中央と「無外」が妨害する中、弓生達は凶星を封じる為の剣を手にすることが出来るのか? そして天狗はどう動くのか・・・?
今回は、隆仁のとある遺言によって崩壊寸前だった三家の均衡が再び安定してくるという事と、次期当主達や弓生の長年の踏ん切りがつく巻 と言って良いかもしれない。最大の敵と中央に対する為の前座というところか。 各人の心情と身の処遇を隆仁の死に絡めて纏め上げている手腕はなかなかと思うが、押し込みすぎて些か物足りない。又、個人間の確執が未だ残っているにせよ、スッキリ処理しすぎた気配がある。尚、この巻で何故柿色の衣の異形が弓生の夢に現れるか理由が分かるが、高遠(雷電)ファンとしては鬼の先行きが気になるところである。 後二巻で完結予定との事なので、話に動きの出る一段前の前置話といったところか。「皆さん踏ん切りつけましょうの巻」でした。
26 終の神話・天泣の章  ISBN: 4-09-430576-9 (初版発行 2003/10/1)
隆仁亡き後、神島に身を寄せていた弓生と聖。使役を外れた鬼達だが、天津甕星の問題解決の為に達彦の指示の元、三吾や佐穂子とも共同で事に当たることとなった。韴御霊剣を巡り中央と無外は再度手を結ぶ。本家、中央、無外の思惑が交錯する中、柿色の鬼に導かれた弓生は韴御霊の災禍を鎮める方法を知るため、三輪の土師墓へ向かうのであった。 神島と秋川の手配で現地にたどり着くが、天狗も又そこに手を伸ばし、神島の術者を葬る。一方三吾は天津甕星が現れた時何が起こったかを知るため、遠野の昆を訪ねていた。箸墓の佐穂子達秋川、東京から高良と駆けつけた聖、遠野の三吾はそれぞれ天狗と対峙する。そんな中、三輪山へ一人向かう弓生。そこで彼は土師一族の過去の祭儀を幻視する。そこで己が成すべきことをはっきりと知った弓生は、心の動揺を聖に悟られまいとするが・・・
この巻で柿色の異形の正体がようやく明らかになる。
本家が一つの試練を乗り越えた後、其々の将来の姿を模索しているような雰囲気の次期当主達と、人生を諦観してしまっている無外の高良、マイペースながらも弓生の様子に何処か不安を覚える聖、そして鎮めの為の代償が己の命と悟った弓生。時折実現出来ないかもしれない未来への悲愁感が漂う本作は、完結に向けての構成を匂わせる。来るべきその時と、二度と無いかもしれない今。一点に向かった時の流れと運命を感じさせる。
内容的には続きであり、途中が展開されたという感じの作品である。次の巻が最終回かどうか、未だ未定のようである。(三吾VS眞巳・御影のお家騒動?!を片づける必要があるので、次の巻完結は難しいのではないかと思うのだが・・・)
27 終の神話・地号の章  ISBN: 4-09-430577-7 (初版発行 2004/04/01)
本家の協力体制の下、柿色の異形の正体を見極めた弓生は達彦達に須佐之男命であると告げる。天津甕星と敵対する須佐之男命。だが封じる為には韴御霊剣が必要だった。剣は石上神社に安置されており、本家は中央との全面対決を決断する。。。奇襲による強奪を計画するが、高良がからんで本家と中央の思惑が錯綜することに・・・ 一方天狗の庄間も行動に移り・・・ 弓生達は剣を手にすることが出来るのか? 高良の行動が意味するものは? そして庄間の次の手は?

次の巻で終わるかどうか不明であるが、この巻は26巻を「起」として「承」の部分という感じである。此れから回答が出るであろう謎の提示とストレートな展開になっている。中央との術合戦が個人的には楽しかった。雰囲気的には前巻を引きずっており、抗い難い定められた未来と変える事の出来る未来、神と人との間で揺れ動く登場人物達を描く。 重点を置いた部分が無いせいか、全般的にやや展開が平坦であるが、登場人物達の心情描写と行動が程よく盛り込まれており、次巻の展開を楽しみにさせてくれる。
28 終の神話・人祇の章  ISBN: 4-09-430578-5 (初版発行 2005/04/01)
韴御霊剣を手にしたまま庄間の罠に嵌った聖と弓生。特殊な空間の中に囚われた二人は、人の心に付け込む卑劣な庄間の攻撃に自分の心とも対峙することになる。 片や二人の失踪を知った三吾や成樹達は必死に行方を捜していた。捜索途中で思いがけない助けを得た彼らは、さっそく救出に向かう。一方、個別に苦戦を強いられていた弓生と聖は、以外な人物が救いの一因となり、弓生は庄間と最後の戦いを繰り広げることになるのだった・・・
無事合流を果たした鬼達と三吾達。土師の血族としての意味を聖達に伝えた弓生は、聖と共に最後の戦いに臨む。 天津甕星の脅威に立ち向かうべく、本家、中央、鬼無里はお互いの協力関係を樹立し、全国に渡る応戦体制を整えていく。 御霊を鎮める弓生、依代となる眞巳、呪法で守りを固める本家・中央の術者達、それぞれが人の世を守るべく最後の抗戦を繰り広げていくのであった・・・ 天津甕星が大地を覆いつくしてしまうのか? 弓生と聖は天津甕星の脅威を退ける事が出来るのか? 人と神と鬼、それぞれの思いが交錯し、最後に迎えた結末は。。。。

今回は事実上の最終巻である。前巻に比べ、最初から早いペースで綴られる展開はとりあえず満足のいく出来。 それぞれ要における呪法や対決場面はほどほどに書き込まれ、物語としてのイメージがしやすい。これまで登場した本家の人間関係や、御師の心理状態がある意味円満解決していく場面には、若干ホームドラマのような雰囲気を感じ物足りない気がするが、最終巻としての役割は無事果たしている。
クライマックスになる対決シーンの盛り上げ方は一巻の対決シーンに類似してなかなか読み応えがある。やや尻すぼみな結末だった感じがするが、人と神と鬼を絡めた運びは十分楽しめ、鬼達や本家の人々、そしてそれぞれの組織関係も全て大団円を迎えている。
新書版で別の時代・・・という話もあるらしく、まだまだ二人の世界を楽しむことが可能かもしれない。
洋書Fantasy(英) | 洋書Fantasy(独) | 日本Fantasy | 特定List | 文献集 | 書籍紹介
* BIBLIOHOLICA * 目次 * 書籍館 * 白蓮樓/霹靂 * 陰陽寮封殺館 * 徒然館 * 画廊 * 連結室 * 雑談室 * 掲示板 *

copyright © 1998-2005 by (破魔矢)  無断複写・転載禁止
リンクは自由です。こちらのアドレスをご使用下さい。 http://www.fantast.net