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Judith Tarr ジュディス・タール

歴史物のファンタジーを得意とする。中世ヨーロッパ、エジプトなどをベースに魅力的な作品を発表してきた。最近ではアーサー王物のシリーズに手を出している。
何冊かペーパーバックスに落ちるのを待っているのだが、なかなか廉価版が出版されない・・・
15年ほど前に第一巻が出版されてから続刊2冊が続けて出され、5年ほどの間をおいて新作が2冊出版された。それから更に7年たった今、本シリーズの最新刊の発売となった。キャラクターが個性的でストーリーの展開も目が話せない楽しさがあるシリーズである。
  Book 1: The Hall of the Mountain King (山岳王の大広間)
  Book 2: The Lady of Han-Gilen (ハン-ギレンの貴婦人)
  Book 3: A Fall of Princes (王子達の没落)
  Book 4: Arrows of the Sun (太陽の矢)
  Book 5: Spear of Heaven (天の槍)
  Book 6: Tides of Darkness (暗黒の潮流)

Tides of Darkness ハン-ギレン(Han-Gilen)国の王子インダロス(Indaros)は快楽主義者で酒と女性に溺れる日々を過ごして両親を含む周りからは役立たずと思われていた。彼には魔力があるのだが、寺院や魔術学院へ行くのが嫌でたいした才能もないように見せかけている。独学で自由気ままに魔力を駆使し、自分の娯楽の為に用いていたが、或るとき魔術の禁忌を破っている所を発見され囚われてしまう。 その世界には『門』と呼ばれる空間の入り口があり、力ある者はその『門』を作って異世界(又は他の地域)への移動が可能なのだが、『門』は魔術師達の厳しい管理化にあり、許可なくして行使することが禁じられていたのだ。ダロスは自己流の特異な力で度々『門』を作ってその世界へ移動していた事実を掴まれてしまったのだ。
囚われた彼は両親からも見放されハン-ギレンを追放。『門』の支配者である黄金帝国の支配者メリアンによって、彼女の祖父で前帝王・大魔術師のエスタリオンの監視下におかれるのだった。 ダリオンを引き取った当時、エスタリオンは世界を喰らい尽くしている暗黒の正体を見極めようとしていたが、探索中に逆襲され行方不明となってしまう。メリアンはダロスと共に行方を探すが、そのダロスも又エスタリオンの後を追って行方が分からなくなってしまう。 一方エスタリオンは別の世界で今まさに暗黒の攻撃を受けている世界へ落ちていて、その世界の一国の女王と共に迎え撃つ準備を始めていた。ダロスもその世界に辿り付き、エスタリオンと共にその世界の防御を固めるべく、以前の快楽主義者の面影も無い活躍をすることになる。 メリアンも又、自分たちの世界を侵略してくる暗黒に立ち向かっていく。防御だけでは先が見えていると感じたダロスは、一握りの同士と共に暗黒の懐に飛び込んでいくが、彼自身闇に侵食されていくのであった。メリアン達魔術師と別世界にいるエスタリオン、そして暗黒の内部に飛び込んだダロス達は暗黒を滅ぼすことができるのか?世界の存亡がかかった戦いの行方は?

役立たずでどうしようもないと皆から思われて育ったダロス一皮剥いたら実は立派な若者だった・・・というと安易な設定に思えるが、自己防衛で身に付けた習慣を引きずりつつ本来の自分を見せ始める流れにはそれほど無理を感じない。メリアンとダロスが恋に落ちるのは些か唐突な感じもするが、本人達はお互いそんなつもりではなかったという要素があるのでそれほど気にならない。二人の絆と信頼関係は物語りの展開にも影響を与えている。後半の多世界をまたぐ暗黒と光の対決は、スケールも十分で展開も無駄なく且つ緊張にとんでいる。 登場人物の個性も豊かで魅力的に描いてある。シリーズを全て読めばもっと背景が分かるが、本書のみでも若干歴史的な背景が分かりにくい程度で十分に楽しめる一冊である。7年ぶりの新刊、忘れかけた前のシリーズを再読してみたくなる。
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