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Sheri S. Tepper シェリ・S・テッパー
アメリカのSF/Fantasy作家。
邦訳作品に『女の国の門』(増田まもる訳・ハヤカワ文庫SF)他、別名E. E. Horlak、A. J. Orde等でホラーやミステリー作品も有り。
King's Blood Four (1983)は彼女の初出版作品。 (初作は翌年に出版されたThe Revenants) このシリーズはフェミニズムで色々議論されたらしい『女の国の門』とは趣きが至って異なり、 純粋に冒険や展開を楽しめる作品に仕上がっている。個人的にはこの系列(時代)の作品のほうが好み。 尚トゥルーゲームシリーズはFantasyとして読むことが出来るが、実はSFのオチが・・・
トゥルーゲーム。チェスに似たルールに支配される世界。世界自体が言うなればチェ
スボードのようにゲーム展開の場所になっている。この世界ではトゥルーゲームを差
配しプレーするゲーム人達と、捨て駒にされるPawn、そしてゲームの力に支配されな
いImmutable達、といった主に3種類の人種(?)に分かれている。(勿論その他に怪
しげな怪物だの何だのは存在する)。ゲーム人達はそれぞれ超能力のような「才能」(
Talent)を持ち、チェスで言えば駒の役割を担っている。Pawnは文字どおり使い捨て
の歩兵役。そして「影響されない者」(Immutable)達は、ゲーム人達の「才能」の力を無にする事が出来る為、
ゲームからは離れて独自の集落を作っている。
駒としてのゲーム人達の役割は、Kings, Princes, Wizards, Dragons, Necromancers, Shapeshifters, Healers, Flyers, 等など細かく分類されているが、 大きく10種類に分けられ、それぞれの役割は魅了・変身・治癒・飛翔・遠見/予知・ 魔力等の才能を持つ事で分類されるシステム。 ゲーム人の子供は、安全な「学びの都市」に集められ、ゲームのルールを学びつつ自 分達の「才能」が顕現するのを待っている。(尚、才能が顕現しない者は自動的にPa wnになる)学びの都市は外の世界のようにゲームに巻き込まれる事は無く、「才能」 が発現してない無力な子供達がPawnとして捨て駒になるのを防ぐ、一種の保護機能を 果たしている。 RPG物を彷彿させる設定は、今の流行の先駈けとも言える。「才能」の扱いは、 マーセデス・ラッキーのヴァルデマールの使徒の能力を想像すれば分かり易いかもしれない。 (各人により力の組合せや強弱が有る) 異なる才能を持つ者達が集団となり、個人の喧嘩にも似た挑戦から、中世で言えば領 主間の争いや国を挙げた戦争のような大小様々な規模のゲームが展開される。 Book 1: King's Blood Four
cover art by James Christensen
Ace Books (1983/04) ISBN: 0-441-44526-8 15歳の主人公ピーター(Peter)は、学びの都市のKing Mertynの塔の門前に捨てられていた孤児 だった。この都市でごく普通にゲーム人の子供として学んでいた彼に、Prince Mandor が接近し、ピーターはMandorに魅了されてしまう。 「祝祭」の時期が近づいたある日、Mandorはピーターに「祝祭」に参加する事を約束 させて贈り物をする。ピーターは喜んで贈り物を貰うが、それが平和な生活の終止符 を打つことになるとは思ってもいなかった。 人々が無礼講で楽しむ「祝祭」では、その期間中にゲームを挑む事は禁止されている が、Prince Mandor は敢えて King Mertynにゲームを挑んだ。だがMertynの周到な備えの為に 思いがけず危機に陥ったMandorは、ピーターを捨て駒として利用する。Mertynのおか げで急死に一生を得たピーターだが、塔の規則の為に外の他の領域に送 り出される事になる。 塔の料理人でガイド役となるチャンス、Pawnの友人であるヤレル(Yarrel)と共に旅に出たピーター は、途中正体不明の集団に誘拐されそうになりながら、治癒者シルクハンズ(Silkhands) や、老予見者ウィンドロー(Windlow)、 大きな領域を保持するWizard ヒマッジェリー(Himaggery) 、性格の歪んだ魔女ダズル(Dazzle)、猜疑心に凝り固まった King Prionde等、様々な人々に出会いそれぞれの思惑に巻き込まれていくのであった。 結局誘拐者達に捕らえられたピーターは、「祝祭」で大怪我をしつつも生き長らえた Manodorの元に連れて行かれる。其処で彼は自分がなぜ連れてこられたかを知ることに なり、孤児と思っていた自分の血筋を知らされる。 自分の「才能」の発見と、旅の途中見つけた小さなゲームの駒が今後のピーターの人 生に大きな変化をもたらす。ピーターの才能とは? 彼の小さなゲームの駒にはどんな 秘密があるのか?三つの大集団で展開される一大ゲームの結末は? 出生に秘密のある少年の自己の発見とある意味、成長物語。 と言ってしまってはみもふたもないが、一言で言うならばそれで差し支えないだろう。 使い古されたテーマであるが、娯楽作品として気楽に流してみるのも良いと思う。 本書は、昔は普通だったが、わずか200ページ程度の薄さである。その為どうしてもこれだ けの内容を入れ込むには書き込みが不足している感じを否めない。ページ 数があれば良いというわけでは当然無いが、聊かキャラが薄く、せっかくの設定が生 かしきれていない。ピーターの血筋は他のシリーズの主人公と密接に関係しており、 才能までも受けついでいる要であるが、ピーター自身の語りが淡白になっていて感情 移入が難しい。逆に、これだけの文章量でここまでストーリーを展開出来ており、更 に著者の初作と言う事を鑑みれば十分な仕上がりと言えるだろう。まだまだ謎が残っ ているが、それは後続の2巻を待つことになる。 本三部作のほか、関連シリーズもすべて相互に補い合っているので、読むなら全て通 したほうが世界観を掴むには良い。昨今流行の分厚い一冊が連なるシリーズ物と比べ てみるのも一興と思われる。 トゥルーゲーム・シリーズ (True Game trilogy) --King's Blood Four (Ace 1983) --Necromancer Nine (Ace 1983) --Wizard's Eleven (Ace 1984) その他同世界のシリーズ(登場人物も被っている) --The Song of Mavin Manyshaped (Ace 1985) --The Flight of Mavin Manyshaped (Ace 1985) --The Search of Mavin Manyshaped (Ace 1985) --Jinian Footseer (Tor 1985) --Dervish Daughter (Tor 1986) --Jinian Star-Eye (Tor 1986) |
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